TryL株式会社 代表メッセージ
私がTryLを創った理由と、
これから起きることへの確信
当たり前の徹底から生まれる「ありがとう」の総量を増やすために。
約12分
社名に込めた思い
TryLは、「トラエル」と読みます。
この名前には、偶然とは思えない一致が込められています。
私のキャリアの原点である作業療法は、英語で「Occupational Therapy」といいます。その「Occupational」の語源は「Occupy」——原義は「手元につかむ、手に入れる」です。「A occupies B」で、AがBという場所や空間、人の時間や心を占有するという意味を持ちます。
日本語で表現すれば、「捉える」。「捉」という漢字は、手と足から成り立っており、人の心身のすべてに向き合う作業療法の本質を、その字形に宿しています。
TryLの「TryL」もまた、「捉える(トラエル)」という音を持ちます。Try——挑戦すること。L——Life、人の人生を見つめること。挑戦することと、人の人生を見つめることを忘れないために、この名をつけました。
作業療法士として身体と心の「捉える」を追求し続けた経験が、経営と組織の「捉える」へとつながっています。TryLという名前は、その連続性の象徴です。
そして「捉」という字が手足から成ることには、もう一つの意味を込めています。どれだけ事業が大きくなっても、自分の手足を愚直に動かすことを忘れない——その戒めです。
捉えることから、すべては始まります。目の前の人を、組織を、そして課題の本質を、手放さずに捉え続けること。それがTryLの仕事です。
第1章 現場が教えてくれたこと
キャリアの原点
私のキャリアの原点は、作業療法士です。
13年間、医療・介護の現場に携わらせていただきました。精神科病棟から身体障害領域、デイケア、介護老人保健施設まで、様々な現場で、私は作業療法士としての思考プロセスを徹底して追求し続けました。その先でたどり着いたのが、一つの気づきです。作業療法士の思考プロセスを突き詰めた先にあるものと、経営コンサルタントのそれは、構造的に同じだという気づきです。
これは、作業療法を表面的にこなすだけでは見えてこない境地です。目の前の方一人ひとりに真摯に向き合い、その人の全体を理解しようとし続けた先に、初めて見えてくるものでした。
徹底の先に見えてきた構造
作業療法士がリハビリを設計するとき、まず行うのは患者様の全体評価です。疾患や障害のある部分だけを見るのではなく、その人の生活史、価値観、強み、そして家族や地域環境との関係性まで含めて把握する。それを手を抜かずに続けていくと、やがて一つのことに気づきます。この思考プロセスは、企業の支援における全体把握とまったく同じ構造をしているということです。
課題のある事業だけを切り取って分析するのではなく、経営者のビジョン、他事業とのシナジー、市場環境との関係性まで含めて全体を把握する。そこから初めて、本質的な問題と有効な打ち手が見えてくる。作業療法を徹底した人間が、なぜ経営支援の文脈でも同じように機能できるのか——その理由がここにあります。
作業療法士は、病気を診るのではなく、その人を診ます。コンサルタントも、問題を診るのではなく、その組織を診なければなりません。
計画の質が成果を決める
もう一つ、作業療法の現場で学んだことがあります。リハビリの成果は、実践の巧拙よりも、その前の評価と計画の質によって大きく左右されるということです。どれだけ丁寧に施術しても、アセスメントが浅ければ成果は出ません。逆に、評価と計画が正確であれば、実践はシンプルになります。
そしてICT導入の経験を通じて、私はこの「計画」の中身をより深く理解するようになりました。計画とは、スケジュールや手順書のことではありません。実践の前に行う、一見地味で泥臭い工程のことです。
事前に関係者と認識を「握っておく」こと。変革に反対する構造を作らないよう、徹底的に敵を作らないこと。専門用語を排し、誰もが理解できる言葉で語ること。関わるすべての人にとってのメリットが明確に見える制度設計にすること。これらは華やかさとは無縁の作業ですが、この工程の密度が、その後の実践の成否をほぼ決定づけます。
興味深いことに、ICT導入の現場でこの工程の重要性を学んだ経験は、作業療法士としての実践にも逆輸入される形で役立ちました。リハビリの計画においても、患者様本人だけでなく、家族や他職種との事前の調整をより丁寧に行うようになり、結果として成果が上がりやすくなりました。異なる領域での経験が互いを深め合う——この往復の経験が、TryLの支援設計の土台になっています。
独学という習慣、そして現場への接続
ITとの関わりは、業務上の必要から始まったものではありません。就職当初から、純粋な興味と向上心から独学でWebサイトの実装を学び、自分でつくり、試し続けていました。誰かに教わったわけでも、資格取得を目指したわけでもなく、好きだから学ぶ——その習慣が、気がつけばひとつの技術的な土台になっていました。
その後、勤務先でICT導入の機運が高まった際、社内にIT人材が不在であったことから、その経験を買われてICT委員会のメンバーに加わることになりました。趣味として積み上げてきたものが、たまたま組織に必要とされた瞬間でした。
しかしICT導入の現場で直面したのは、技術の問題ではありませんでした。ITに不慣れなスタッフ、変化を拒む現場、部署間の摩擦——これらはすべて、組織構造と人間関係の問題でした。作業療法士として培った評価・計画・関係構築の思考プロセスをそのまま組織に適用し、誰に指示されたわけでもなく調整を引き受けました。信頼の構築に年単位の時間を要しましたが、最終的には月間24時間以上の業務削減を実現しました。
技術は調達できます。しかし、人と組織が変わるプロセスには、年単位の投資が必要です。
両者に共通する知識の要件
作業療法とコンサルティングには、もう一つ共通する要件があります。成果を出すためには、広く、かつそれなりの深さを持った知識が不可欠だということです。
作業療法士は、解剖学・生理学・心理学・社会学・福祉制度まで横断的な知識を持ちながら、目の前の患者様の状況に合わせて適切なレイヤーと解像度で施策に落とし込み、現場で実現可能な形に翻訳します。経営コンサルタントも、戦略論・組織論・財務・ITまで幅広い知識を持ちながら、その企業の実情に合わせて同じことをします。そして両者に共通するのは、学び続けることでしか成果を上げられないという厳然たる事実です。
「仕方ない」と向き合い続けること
作業療法士の仕事には、もう一つの側面があります。「仕方ない」という無念と向き合い続ける仕事、という側面です。
個人の身体的な限界においても、社会制度の壁においても、「今この瞬間」にはどうにもできないことがあります。それは事実です。しかし、だからといって「仕方ない」と諦めて手を止めるのか。それとも「今は仕方がないが、未来はきっと違う」と課題意識を持ち続け、年単位で愚直に取り組み、結果が出るまで多面的に解決を模索し、学び続けるのか。その姿勢の差が、長い時間をかけて大きな結果の差となって現れます。
企業経営においても、これは全く同様だと考えています。市場環境、組織の成熟度、人材の状況——今この瞬間に変えられないことは必ずあります。しかし、それを理由に思考を止めた組織と、課題意識を持ち続けた組織とでは、5年後、10年後の姿が根本的に違います。TryLが「年単位の投資」という言葉を使うのは、この確信に基づいています。
仮説の検証
ある時期から、私は一つの仮説を持つようになりました。「作業療法士として本当に成果を出せる人間であれば、経営コンサルタントとしても機能できるはずだ」という仮説です。
その検証のために、中小企業診断士の学習を始めました。現場での業務を継続しながら約一年間の独学で臨んだ結果、一次試験を合格し、二次試験では合格基準まで2点という水準に達しました。仮説は概ね正しかったと判断しています。
同時に、この学習を通じて、自分が現場で実践してきたことが経営・組織論の観点からも一貫した論理を持つものであることを確認しました。そして、組織の変革は内側からだけでは構造的に限界があることも、改めて理解しました。
「内側から変えるより、外側から伴走する方が、より多くの組織に、より大きな変革をもたらせる」——その確信がTryLの創業につながっています。
第2章 これから起きること
知的労働の「工業化」
AIは現在、翻訳・要約・分析・文書作成といった知的作業を、これまでとは比較にならないコストで処理できるようになっています。
多くの企業がこれを「生産性向上のツール」として捉えています。しかし私の見方は異なります。これは効率化の話ではなく、「組織の中で人間に何をさせるか」という問いそのものの再定義です。知的労働の「工業化」が始まっています。
AIの本質的な変化は、業務の効率化ではありません。人間の役割の再定義です。
20年後の組織インフラ
20年後、すべての組織に経理担当者がいるように、「AIを活用して問題解決できる人材」が組織の必須インフラになります。経営層には一定のAIリテラシーが求められ、それは「読み書きそろばん」と同水準の基礎素養として位置づけられるでしょう。
この移行を早期に完了した組織と、対応が遅れた組織とでは、10年から20年後の競争力に決定的な差が生じます。
高まる意思決定の価値
AIが知的作業を代替する時代において、人間の価値が高まる領域は一点に収束します。「意思決定をし、責任を取ること」です。
情報の処理をAIに委ねることで、経営者や事業責任者は本来集中すべき意思決定に、より多くの時間とエネルギーを投じられるようになります。判断の質と速度が、組織の競争力を決める時代が来ます。
インテグリティが価値を生む時代へ
AIの普及がもたらす変化は、生産性や組織構造にとどまりません。誠実さ、善良さ、そして高潔さ——すなわち「インテグリティ」の経済的価値が、根本的に変わろうとしています。
これまでの社会では、ある程度「効率化=省略」が成立する余地がありました。品質のばらつきや、手間を惜しんだ対応も、情報の非対称性や選択肢の少なさに守られてきた面があります。しかしAIの普及によってその余地は失われていきます。均質なサービスが低コストで供給される時代に、最後に差別化の源泉となるのは、誠実であること、手を抜かないこと、顧客に対して高潔であり続けることです。
インテグリティは、AI時代における最も再現困難な競争優位です。そしてそれは、組織の中の人が本来の力を発揮できている状態からしか、生まれません。
最後に人を動かすのは、人間の意志
AIがあらゆる知的作業を代替できる時代においても、私には一つの確信があります。最終的に人間をエンパワメントできるのは、「人間の意志」だけだということです。
データは判断を助けます。AIは選択肢を示します。しかし、変わろうとする意志、踏み出す意志、責任を負う意志——これらはいかなるテクノロジーも代替できません。組織が本当に変わるとき、その根底には必ず、誰かの意志があります。
TryLが支援の中心に置くのは、ツールでも手法でもなく、その組織に宿る人間の意志です。その意志が発揮されやすい環境を整え、意志が連鎖していく組織をつくること——それがTryLの目指す変革の姿です。
変わらない最大の壁
しかし、ここでも同じ壁が立ちはだかります。
ツールは調達できても、「AIを前提とした業務・組織・人材体制」への移行は、調達できません。現場を知らないまま外部からフレームワークを持ち込んでも、組織は変わりません。経営と現場の両方を理解し、人が変わるプロセスに伴走できる存在が必要です。
作業療法士として13年間、現場で変革を推進してきた経験と、AIを含むITの知識を掛け合わせてTryLを創設したのは、まさにこの理由からです。
第3章 TryLが目指すもの
支援の姿勢について
作業療法士として現場に立ち続けるなかで、私が最も大切にしてきたことがあります。それは、目の前の方から真摯に教わる姿勢です。
リハビリにおいて、成果を出すのはセラピストではありません。その方本人です。セラピストができることは、その人の状況を深く理解し、その人自身が力を取り戻すための環境と機会を整えることだけです。そのためには、まずその人から教わらなければなりません。
経営支援においても、この構造はまったく同じです。成果を出すのはその組織の人間であり、コンサルタントではありません。顧客の事業・文化・現場から真摯に教わり、その上で責任を持って提言する——この姿勢がTryLの支援の核心です。
答えは、常に顧客の中にあります。私の役割は、それを引き出す問いを立て、責任を持って伴走することです。
サービス品質の基準
私には、サービス品質に関して一つの個人的な基準があります。作業療法士として職務にあたる際、私は常に自分に問いかけていました。「もし自分がこのサービスを受ける立場だとして、全額自費で支払ってでも受けたいと思えるか」と。
顧客が支払う対価に見合った価値を誠実に届けること——これは義務感からではなく、私自身の美学として大切にしてきたことです。当たり前の徹底を追求し続けるのは、この基準を自分の中で妥協したくないからでもあります。
余裕が、組織を変える
現場で長く働くなかで、もう一つ感覚として身に沁みたことがあります。現場の人がいきいきと働けない状態では、どれだけ優れた仕組みを導入しても、組織の生産性は高まらないということです。
業務過多や高ストレスの状態に置かれた人は、他者に優しくできなくなります。誰かを攻撃し、組織がギスギスし、連携が失われていく。連携が失われればさらに業務負荷が増し、ストレスが高まる。この悪循環が、組織を全体最適から遠ざけていきます。
後にTOC理論を学び、この構造には理論的な裏付けがあることを知りました。しかし私にとってそれは、理論で理解したというより、現場で身体ごと経験したことが言語化された感覚でした。
そして同時に気づいたのは、この感覚を言葉だけで他者に伝えることの難しさです。いくら説明しても、ストレス下にある人には届きにくい。しかし実際に余裕が生まれ、連携が機能し始めると、ほとんどの人は自分でその重要性に気づいていきます。
だとすれば、支援者の役割は「教える」ことではありません。余裕が生まれる最初のきっかけをつくり、人が自ら気づいていける環境を整えることです。この考え方が、TryLの支援設計の根底にあります。
ともに歩みたい組織
TryLが伴走したいのは、次のような組織です。
優秀な人材がいる。経営者に変革への意志がある。顧客に誠実に向き合っている。しかし、変革をどこから始めるべきか、どう進めるべきかがわからない。そして、それを推進できる人材が社内にいない。
そのような組織の「移行期における伴走者」として、TryLは存在します。
TryLが提供できる支援
私がこれまでのキャリアを通じて培ってきたものを、最も活かせる局面があります。AI前提の時代——これまでの社会とは根本的に異なる事業環境への移行期、その只中にある企業への支援です。
多くの経営者がAI活用を語るとき、生産性や競争力の話に終始します。しかしその裏側で、働き手の心身への負荷が見落とされることが少なくありません。TryLが目指すのは、企業の競争力・成長性と、現場で働く人の心身の健康が両立できる状態です。現場の目線を無理なく経営に組み込んだ人事・組織の施策を、作業療法士としての現場経験と経営の知識を掛け合わせて支援します。
具体的には、AI前提の事業環境を想定した事業施策の創出と組み換えの支援です。何を残し、何をAIに委ね、どこに人間の意志と判断を集中させるか。その設計を、経営層と現場の両方の視点から伴走しながら考えていきます。
個別最適化という差別化
現場での経験を通じて、私はサービスの本質を学びました。標準化されたサービスが溢れる時代に、顧客が本当に価値を感じる瞬間は、自分のニーズに真摯に向き合ってもらえたと感じるときです。
AIが普及し、均質なサービスの供給コストが下がるほど、一人ひとりのニーズに応える個別最適化の価値は相対的に高まります。そしてそれを実現するのは、組織の中の人が本来の力を発揮できている状態があってこそです。
TryLが追求するのは、組織の中の人が、本来発揮できるはずの力を発揮できる状態をつくることです。
その先に、当たり前の徹底から生まれる「ありがとう」が積み重なっていく社会があると、私は信じています。
TryLは、この価値観を共にできる企業とともに成長していきたいと考えています。誠実であること、手を抜かないこと、顧客に対して高潔であり続けること——それを大切にしている組織と、一緒に前に進みたいと思っています。
橋をかける仕事
すべての業務を通じて、私が最も面白いと感じてきた仕事があります。それは、「橋をかける仕事」です。
橋をかけようとするとき、最初は必ず抵抗に遭います。「この橋を渡って大丈夫か」「今までの道で十分だ」「余計なことをするな」——そうした声は、変革の現場では必ず起きます。しかし、愚直に橋の信頼性を積み上げていくと、やがて多くの人がその橋を使うようになります。
海を直接渡るより安全に。迂回するよりも格段に早く。同じ結果に、より少ない消耗で辿り着けるようになる。その日々の余剰の差が積み重なり、いつしか個人レベルで、組織レベルで、そして社会レベルで、豊かさとして現れてくる。この現象が好きです。
作業療法とコンサルティング。現場と経営。ITと組織変革。具体と抽象。一見全く異なると思われがちな世界の間に、愚直な取り組みで橋をかけ、アナロジーを見出し、行き来できるようにしていく。TryLの仕事の面白さは、ここにあります。
当たり前の徹底から生まれる「ありがとう」の総量を増やすために。
TryLは、そのための会社です。
TryL株式会社 代表